開発チームのチームビルディングに「カルチャーマップ」を使ってみた

先日、社内でとあるチームからチームビルディングの依頼を受けました。

チームリーダーから要件をヒアリングしたところ、チームの特性としては以下のように整理することができました。

  • 期間限定の短期決戦プロジェクトチーム
  • 各チームから精鋭が集められた混成チーム

チームビルディングということで、最初は無難にドラッカー風エクササイズをやろうかとも考えました。しかし、前述のような文化的背景が異なるチームから集まった短期決戦型のチームでは、もう少しコントラストの強い自己認識が必要ではないかと判断し、別の手段をとることにしました。それが、「カルチャーマップ」です。

「カルチャーマップ」は、エリン・メイヤーさんが著書『異文化理解力』で提唱した、多国籍チームの相互理解を深めるツールです。異なる国の人々がチームワークをするために必要と考えられる8項目について、それぞれの特性をマッピングします。国レベルで、文化的背景が強く異なる人々の認識を整理するためのツールなので、かなりコントラストの強い自己認識が求められます。短期決戦型のチームではそれくらいはっきりしたツールの方が効果を得られるのではないかと考えました。

「カルチャーマップ」の8項目をベースに、今回ファシリテーションに与えられた最大2時間という所要時間と、ソフトウェア開発プロジェクトであるという性質から、これを5項目に絞り込みました。それが以下の項目です。

  • コミュニケーション
    • ローコンテクストvsハイコンテクスト
  • 評価
    • 直接的なネガティブ・フィードバックvs間接的なネガティブ・フィードバック
  • リード(決断)
  • 信頼
    • タスクベースvs関係ベース
  • 見解の相違
    • 対立型vs対立回避型  

それぞれの項目について、5段階のグラデーションで自分の特性を順に考え、チームで発表してもらう、というのを繰り返します。

結果を手っ取り早くスプレッドシート上に表現したものがこれです。 f:id:daiksy:20190306142303p:plain

この図を項目ごとに作成。最後にレーダーチャートを作りました。

f:id:daiksy:20190306142422p:plain

参加した人のそれぞれの結果が、チャート上の線として表現されています。

これによって、チーム内で、たとえば直接的なフィードバックを好む人と、間接的なフィードバックを好む人とで、真逆の価値観をもっている人、というのが見えてきます。これをチームの認識と捉えることで、コミュニケーションにおいてこうした傾向を考慮しつつ、仕事をしていきましょう、と考えていくことができるようになります。自分は直接のコミュニケーションを好むが、Aさんは真逆の性質を持っているのだな、という認識があれば、たとえばコードレビューなどにおける表現にもそれにあわせた工夫が生まれたりするでしょう。

最も注意すべきは、このチャートの結果に良し悪しといった要素は絶対にないということです。単なる相互理解ツールなので、「見解の相違について対立的なアプローチをすべきてはない」といった使い方は絶対にやってはいけません。

今回カルチャーマップを作った所感として、ドラッカー風エクササイズなどと比べてもかなり特性をダイレクトに表現することになるので、短期決戦型のプロジェクトのチームビルディングには狙い通り効果があると思いました。ただ、表現がダイレクトであるがゆえに、ここまではっきり自己を表現してしまうのを苦手と感じる人もいるかもしれません。そういう意味では、チームビルディングの場のファシリテーションに少し慣れや工夫がいりそうだなと思いました。

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異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

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