はてなインターンの振り返りをYWTを使ってやってみた

今年は、はてなインターンの実行委員長という仕事をしている。

hatenacorp.jp

8月15日から9月9日までのインターンを終え、今年の教科書も公開ができた。

developer.hatenastaff.com

まだもう少し委員長としての仕事が残っているが、ここで一度今年の振り返りをしようということで、実施した。

振り返り手法としてのKPTとYWT

ぼくは普段、Mackerel というプロダクトの開発にかかわっている。Mackerelでは開発手法にスクラムを採用していて、2週間のスプリントごとに毎回振り返りを行っている。ここで使っているのはKPTという手法だ。

KPTはKeep, Problem, Tryの略で、2週間を振り返って、その期間でKeepしておくべき良かったこと、Problemとして議論すべき問題となること、そしてそれらを受けて次のスプリントですべきTryを決める。

K, P, Tの3つのカテゴリについてを議論する順番も決まっていて、Keepからはじめるのがセオリーだと言われている。誰だって問題点より良かった点について語り合う方が気分がいい。振り返りは、単に問題点や悪かったところにのみフォーカスするのではなく、あくまでチーム全体のその期間の仕事を考えるのが大切だ。なので最初はKeepについて深掘りをすることで、チームの成功にスポットをあててモチベーションを高めるのが重要なのだ。

Mackerelチームでは先日、少し長い期間を経て開発された大きな機能がリリースされた。そこで、2週間のスプリントの振り返りとは別に、その機能の開発にスポットをあてた振り返りをしようということになった。最初はいつもどおりKPTを使ってやろうと思っていたのだが、チームメイトの id:a-know さんからYWTをやってみないかと提案があった。

KPTは、スプリントなどの継続的に実施する振り返りに向いた手法ではあるが、長い期間についてスポット的な振り返りをやる場合は、YWTの方が効果が高いのだという。チームで試したところ、たしかに効果が高いという実感があったので、インターンの振り返りにもこのYWTを採用してみることにした。

YWTは、やったこと(Y)、わかったこと(W)、次にやること(T)というフレームに当てはめて議論をしていく。期間が長いと、振り返りのときにはいろいろ忘れてしまっているので、KeepやProblemよりもこちらの枠組みで考えたほうが、たしかに思い出しやすい気がした。

インターン振り返りでのYWTのやりかた

今年のインターンは4月から準備をはじめ、半年の長期間に渡るプロジェクトだった。途中で気づいたことなどは、随時Issue化して記録しているのだが、これはこれで長い期間かけて記録されていくので、数も多く粒度はバラバラである。まずは全体として、少し大きな視点で振り返りをしたいと思ったので、その観点でもYWTは最適だったと思う。

本来はホワイトボードに付箋などを貼ってやるのが正しいやり方だと思うが、今回はメンバーが京都と東京にわかれていて、テレビ会議での振り返り会となったので、少し工夫をする必要があった。

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まず、このような表をGoogleスプレッドシートに用意する。

Googleスプレッドシートは、ログインしている人の編集状態がリアルタイムで反映されるため、リモート参加している人がそれぞれここにアクセスすることで、スプレッドシートがホワイトボードと付箋の役割となる。会議として確保した時間は1時間。

ファシリテーター(ぼく)は、Googleハングアウトでこのスプレッドシートを画面共有しながらファシリテーションしていく。

まず、最初の15分間でメンバーにYとWを順に書いていってもらう。ちょうど付箋にどんどん書き出してホワイトボードに貼っていくようなフェーズだ。スプレッドシートにidの列があるのは、記入する行がかち合わないように、まずid列に名前を書いてもらって行をロックしてからゆっくり内容を書いてもらうようにという工夫である。

15分終わったら、Yから順番にファシリテーターが深掘りをしていく。記入者に詳細をヒアリングしつつ、メンバーで議論していく。Yが終わったら次はWについてだ。

最後に、さらに10分時間をとって各自にTも記入してもらう。YとWを深掘りしている中でTとすべきことが明らかになっていた場合は、議論の途中でファシリテーターがTをすでに記入してある。

そして記入が終わったTも深掘りすれば、一連の振り返りは終了である。

感想

KPTはKとPという枠組みの関係で、"良かったこと"と"悪かったこと"という2軸に考えが集中することになる。一方でYやWは、良し悪しというよりも事実ベースで考えを深めていくので、より幅広い意見が出やすいと感じる。この違いが、継続的な振り返りと、長期的なスポットの振り返りとでそれぞれマッチしているように思う。

さきほども書いたが、長い期間のプロジェクトでは振り返りのタイミングでは多くのことを忘れていたり、当初の熱気が冷めてしまっていたりする。そのときに、KeepやProblemについて考えてもあまり熱のこもった議論にはなりにくい。一方で、"やったこと"と"わかったこと"という枠組みは、そもそもこの長い期間で自分たちは何をしたんだっけ、というところから振り返ることになるので、やっているうちに徐々にプロジェクトの様子を思い出していくことができる。さらに時間が経って熱気が冷めていることが、むしろ自分たちの考えに客観性をもたらしてくれていて、それが効果的に働く。

半年に1回とか、長期プロジェクトの最後の振り返りなどに効果を発揮する手法であるというのを実感した。