新しい会社に入社してから7ヶ月でスクラムマスターとしてやったこと

いよいよ RSGT2022が迫ってきましたね!

これはRSGT2022を待ちわびるアドベントカレンダーの記事です。

qiita.com

RSGT 2022では、1月5日の14時からRoomCにて「Scrum@Scaleの理論と実装 - 組織をリファクタリングしながらスケールする」というお話をさせていただきます。

Scrum@Scaleを採用して運用しているチームに今年になって参画し、そこでの取り組みや「Scrum@Scaleってどういうものなの?」といったお話をさせてもらう予定です。

スクラムマスターとしての7ヶ月

さて、ぼくは2021年5月に今の会社にエンジニアリングマネージャーとして入社しました。現在のミッションは、Scrum@Scaleで運用されている部門全体を統括して、その開発プロセスを整えていくのが仕事です。他にも、社内にスクラムを横展開したり、採用・育成などエンジニアリングマネージャーとしての仕事もあるのですが、このエントリではその中で「スクラムマスター」としての仕事に焦点を絞って入社から今日までの7ヶ月間なにをしてきたのかをふりかえってみようと思います。

Scrum@Scaleの整えが大きなミッションのひとつになりますので、ぼくの場合は「スクラムマスター」と言ってもチームのスクラムマスターだったり、Scrum@ScaleにおけるScrum of Scrum (SoS)を担うスクラムオブスクラムマスターだったり状況によっていろいろな帽子をかぶってしまうのですが、今回はScrum@Scaleにおけるぼくの役割について書いていきます。

Scrum@Scaleについての詳細はここでは説明しませんので、以下の記事や公式ガイドをご参照ください。

creators-note.chatwork.com

eh-career.com

scruminc.jp

また、スクラムマスターがどういう役割なのかについては、同じく下記の記事をご参照ください。

daiksy.hatenablog.jp

入社前

内定受託後、入社日が決まってから配属先のマネージャなどとのチャットルームが開設され、入社後の仕事や手続きについていくつかのコミュニケーションがはじまっていました。そこでさっそくスクラムフェス大阪へのスポンサーを打診しました。自分がエンジニアリングマネージャーとして採用に関わるであろうことを見越した動きでした。まずはアジャイルコミュニティに対して露出を増やして、自分の入社とあわせてこの会社はスクラムに力を入れている、というブランディングをしていくのが目的でした。

1ヶ月目(2021年5月)

5月1日に入社しました。いちおうぼくは大阪オフィスの配属なのですが、こういうご時世のためフルリモートワークでの入社となります。

まずはチームメンバーやPO、部門に関連する人たち全員と1on1を実施しました。リモートワークでのスタートだったので、そもそも明示的に時間をとって1人ずつと話をしていかないと顔と名前を覚えられません。

エンジニアリングマネージャーとしての入社だったので、まずは周囲の人との期待値調整が重要だと思いました。1on1では主に自分になにを期待されているのか、それに対して自分でそれをやれそうか、それとも自分では難しそうか、といった話をしていきました。

エンジニアリングマネージャーだったり、スクラムマスターといった仕事は自分で直接の成果物をつくる仕事ではありません。入社直後の、周りから信頼を得ていきたいタイミングでも具体的な成果を見せづらい役割でもあります。目に見える成果が出せない分、周囲との期待値調整に気を配って過ごした1ヶ月でした。

スクラムマスターとしての動きは、SoSの各イベントのファシリテーションをこれまで業務委託のアジャイルコーチにお願いしていたのですが、それを自分に巻き取りました。SoSのスクラムマスターとして振る舞うことで、Scrum@Scale組織全体の状況を大まかに把握できるのと、SoSに干渉していくことでScrum@Scale全体の改善に関わる一歩目を踏み出しやすいと考えたからです。

2ヶ月目(2021年6月)

目に見える成果を出しづらい仕事なので期待値調整を丁寧にやる、など偉そうなことをさっき書きましたが、とはいえ不安がいっぱいでこんなエントリを書いたりしていました。

daiksy.hatenablog.jp

6月は引き続きSoSのスクラムマスターとしてふるまうのと同時に、まだ未整備だったMetaScrumを動かしはじめました。具体的にはMetaScrumとしてのデイリースクラムなどのイベントを整えました。

Scrum@Scaleではぼくが参画した時点で3チームが稼働していました。3チームが比較的自由に動いており、その自由度は維持したかったのですが、Scrum@Scale全体としてある程度の全体統一は必要だという課題がSoSを運用するうえで認識されました。そこで、カレンダーを調整して3チームのスクラムイベントがある程度協調できるように変更しました。 たとえば、全チーム統一して水曜開始・火曜終了の1週間スプリントとする、デイリースクラムは3チームが同時間帯に実施し、その直後にSoSのデイリースクラムを設けて情報が時間的に隙間なく流れるようにする、などです。

6月はスクラムフェス大阪に登壇もしました。

speakerdeck.com

3ヶ月目(2021年7月)

MetaScrumの整えをもう少し進めました。会議体の整備などをして、3チーム全体に対する意思決定の場を整えました。

社内向けにアジャイル勉強会を主催して、他部門の方にむけたScrum@Scaleや、各チームのスクラムの取り組みを紹介したりしました。

人員配置の関係と、自分としてももう少し現場に入り込んで観察したい、ということでSoSに加えて3チームのうちの1チームの現場スクラムマスターになりました。

この頃にRSGT2022のスポンサー募集が開始され、会社にスポンサー拠出の打診をしたところ快く応じていただきました。

そうこうしているうちに試用期間が終わりました。

4ヶ月目(2021年8月)

SoSのスクラムイベントを改善しました。コンテキストを共有せずにどう改善したかを書くと難しく、コンテキストを書こうとすると膨大になってしまうので詳細を書きづらいのですが、SoSを含めてScrum@Scale全体の運用の詳細は毎月少しずつ変化しています。

このタイミングでScrum@Scaleで動いているプロジェクト全体のむきなおりをやったりもしました。

ぼくが現場スクラムマスターとして入ったチームは、ちょうどこの頃いい感じに混乱期に突入していたので、チームに「タックマンモデル」について説明するなどもしていました。

5ヶ月目(2021年9月)

Scrum Incさんが提供されているScrum@Scaleの公式トレーニングを受講しました。これは本当に受講した甲斐があって、これまでの自分たちの取り組みの答え合わせにもなりました。Scrum@Scaleではスクラムマスターサイクルとプロダクトオーナーサイクルという2つのサイクルを回して運用していきます。研修を受けたことで、スクラムマスターサイクルの実装は比較的うまくやれているが、プロダクトオーナーサイクルに課題が多い、ということが改めて理解できました。同時に、次はどう改善していくべきなのかを明確化することができました。

先程Scrum@Scale全体のカレンダーを統一した、と書きましたが、1週間のタイムボックスが維持されていれば細かい部分のアレンジは各チームに委ねています。3チームあるうちの1つのチームで1dayスプリントっぽい動き方がはじまりました(大きい枠組みでは1週間単位に他のチームと同期をとります)。

6ヶ月目(2021年10月)

現場に入っているスクラムチームでは、少しベロシティが安定しない時期が続いていたため、デイリースクラムとレトロスペクティブで少し強めにチームに介入しました。その成果もあるのかスプリントゴールの達成度が向上し、ベロシティを安定して計測できるようになりました。

MetaScrumやEATなどの枠組みを再編し、研修を受講して得られた課題を解決していくための体制を整えました。Scrum@Scaleそのものを変革していくバックログをEATの活動として扱えるようにしていきました。

社内横断的にスクラムマスターを支援するために、「スクラムマスターギルド」を立ち上げました。毎週1回の定例に各チーム(別部門の人も含む)からスクラムマスターが集まり、お互いの知見や課題を共有・相談する活動をはじめました。

スクラムマスターの採用や育成を強化するために「スクラムマスター」のジョブ・ディスクリプションをリニューアルしたりしました。

7ヶ月目(2021年11月)

Scrum@Scaleの3チームの状況を整理したところ、そのうちの2チームは関連性が高く、残りの1チームは比較的独立して動けている、ということが見えてきたのでSoSとMetaScrumを再編。2チームによるSoS&MetaScrumと、残りの1チームに別け、3チーム全体はEATとEMSによってつなぎこまれるという形にしました(ただしEMSはまだそこまで上手に機能していないので課題として取り組み中です)。

とこんな感じでここまで、簡単にではありますがぼくの入社から今日までのスクラムマスターとしての仕事をふりかえりました。

Scrum@Scaleとして具体的な実装がどうなっているのか、その変遷はどうなのか、といった詳細はRSGT2022でお話するつもりですので、ぜひお立ち寄りください。また、ぼくが勤めるChatwork株式会社はRSGT2022にスポンサーとして協力しています。

会場でお会いできるのを楽しみにしています!! (オンライン, オフライン問わず)