さだまさしの曲のYoutube再生回数を可視化してみる

Scala勢がさだまさしでにわかに盛り上がっている。

qiita.com

なるほどさだまさし

世の中的にさだまさしの曲が、毎日どのくらい聴かれているのか気になったので、Youtubeの再生回数をMackerelで可視化してみよう。

Youtube APIで再生回数を取得する

Youtube APIを利用するには、まずGoogle Developer ConsoleAPIキーを発行しよう。

Developer Consoleでプロジェクトを作成し、"YouTube Data API v3" を有効化する。するとYouTubeからデータを取得するためのAPIキーを発行できるようになる。

APIキーには、ブラウザ用やサーバー用などいくつかの種類がある。これは、リファラーやIPアドレスによってAPIアクセスを制限するための使い分けで、ぼくはサーバー用を選択して自分が利用しているEC2インスタンスIPアドレスを通した。

APIキーさえ取得できれば、動画の再生回数は以下のURLから取得できる。

https://www.googleapis.com/youtube/v3/videos?part=statistics&id={動画のID}&fields=items%2Fstatistics&key={APIキー}

たとえば、この記事を書いている今、『関白宣言』の情報を取得すると以下の様な結果がかえる。

$ curl -X GET 'https://www.googleapis.com/youtube/v3/videos?part=statistics&id=tsXkp9FVzgg&fields=items%2Fstatistics&key={APIキー}'
{
 "items": [
  {
   "statistics": {
    "viewCount": "786716",
    "likeCount": "1436",
    "dislikeCount": "105",
    "favoriteCount": "0",
    "commentCount": "121"
   }
  }
 ]
}

このviewCountが再生回数だ。これをMackerelにポストしよう。

Mackerelのサービスメトリックへのポスト

Mackerelにはサービスメトリックという機能があって、これはホストに依存しない任意の値をポストしてグラフ化できる機能だ。

Mackerelの画面からサービスを作成すると、以下のAPIを使ってそこにメトリックをポストできる。

http://help-ja.mackerel.io/entry/spec/api/v0#service-metric-value-post

さて、YoutubeAPIから取得したviewCountをMackerelにポストしてみよう。雑にコードを書いてみた。

post_uri = URI.parse('https://mackerel.io/api/v0/services/masashi/tsdb')
https = Net::HTTP.new(post_uri.host, post_uri.port)

https.use_ssl = true
req = Net::HTTP::Post.new(post_uri.request_uri)

req["Content-Type"] = "application/json"
req["X-Api-Key"] = "{api_key}"
payload = [{
  "name" => "masashi.kanpaku",
  "time" => Time.now.to_i,
  "value" => view_count.to_i
}].to_json

req.body = payload

res = https.request(req)

こんな感じでMackerelにポストするスクリプトを作り、毎分動かしてみよう。10分くらい待つとグラフが描画されはじめる。

f:id:daiksy:20151222193615p:plain

グラフが平坦すぎる!!!!

とはいえずっとメトリックをとっていると、1時間で50回ずつくらい再生回数が伸びているのがわかった。 意外と再生されてる。

Mackerelにはグラフを1分ごとの差分値で表示する設定がある。

f:id:daiksy:20151223120027p:plain

この設定に切り替えてグラフをみてみると、、、

f:id:daiksy:20151223120049p:plain

なるほど。けっこう定期的に再生回数が伸びてる。

diffを取りつづけることで生き残っていくということ

この記事はDevLOVE Advent Calendar 2015 の20日目の記事です。

www.adventar.org

今年のテーマはdiff。

エンジニアとして生きている中で、ぼくが感じる大きなdiffがある。

スマートフォンの存在だ。

今でこそ当たり前に存在し、スマートフォンエンジニアは身の回りにもたくさんいる。しかしぼくが新卒でこの業界に入ったとき、このような端末はまだ影も形も存在していなかった。

2001年に大学を卒業し、あれから14年。ITの世界ではとても大きなパラダイム・シフトがあったということだ。

仮に65歳で定年するとして、それまでぼくの現役人生はまだ20年以上ある。と、いうことは人生の中であと1回か2回は、このようなパラダイム・シフトが起こりえるということだ。そのときぼくは何をしているだろう。 10年後の、まだ想像すらできない世界で生き残るために、なにが必要だろう?

必ずしも過去の経験が未来に当てはまるとは限らない。「わしが若い頃はこうやって生き延びたものじゃ」なんていう言葉は完全に老害っぽい。しかし未来が不確かである以上、過去から学べることはあるはずだ。

今までの10年くらいを振り返ると、本当にいろいろなことがあった。で、これまでなんとなく順調に生きてこれたのは、身の回りのさまざま事柄のdiffをとりつづけた結果なのかな、と思う。

  • 凄腕のエンジニアと自分とのdiff
  • 憧れの業界と自分の仕事とのdiff
  • 過去の良い経験と悪い経験とのdiff

こういった様々なdiffをとって、その差分をよい方向に縮めるには何をすればいいか、そういうことを考え続けてきた結果なのかな、と思う。

さて、ここで問題になることが1つある。diffをとる相手先を的確に選ばないといけないという問題。 下手をすると、diffをとった結果、自分が圧倒的にイケてる、と勘違いしてしまったり、逆に自分には価値など無いと卑屈になりすぎてしまったりする。そうではなくて、「自分はまだまだダメだ」と心が折れないレベルの相手とdiffをとろう。そうでないと現状にあぐらをかいてしまったり、逆に圧倒的な力の差に絶望してくじけてしまったりする。

職場の身近な先輩。コミュニティで仲の良い優秀な人。そういう「身近にいるちょっと自分よりすごい人や物事」との差分を埋め続けていくと、気づいたらずいぶん遠くまできていたなぁ、というくらいのペース配分でdiffをとりつづけよう。

今年行ったライブを振り返る

今週のお題「今年見に行ってよかったもの」

毎年年末になるといろいろ1年を振り返るエントリを書いてるので、今年も書く。 2015年ふりかえり、第1弾は、はてなブログのお題ともからめつつ「今年行ったライブ」。

去年はこんな感じだった。

daiksy.hatenablog.jp

1月18日 World Order (オリックス劇場)

今年を最後に、須藤元気がパフォーマンスから抜けるらしくて寂しい。


WORLD ORDER ”THE NEXT PHASE”

2月15日 ストレイテナー (KYOTO MUSE)


ストレイテナー - 俳優 千葉雄大出演「DAY TO DAY」ミュージックビデオ(フルバージョン)

新曲のDAY TO DAYが良すぎるので絶対来年も行きたい

5月16日 ゲスの極み乙女 (大阪城野外音楽堂)

アンコールでキラーボール2回演奏してくれて最高だった

www.youtube.com

5月23日 岡村靖幸 (Zepp Namba)

ずっと生で聴きたいと思ってた"あのロン"聴いた瞬間、イントロで泣いた。

www.youtube.com

7月4日 京都大作戦

2日チケット買って、数年ぶりの参戦。雨に打たれて風邪をひいて翌日不参加という悲しみ。

でもここでtricot観てドハマリしたのでした。


tricot『99.974℃』MV

8月14 〜 16日 ライジングサンロックフェスティバル

とにかく最高のフェス。毎年行きたい。

daiksy.hatenablog.jp

8月29日, 30日 RUSH BALL

今年のメンツは俺得すぎた。今年唯一のHIATUSチャンスだった。


the HIATUS - Horse Riding 【日本語字幕入り】(Music Video)

10月1日 toe (KYOTO MUSE)

今年のベストライブは絶対これ!!!

ライブ後の数日間、余韻がすごすぎてtoe以外の音楽聴けなかった。


TOE LIVE AT THE REGENT: Goodbye

10月27日 the band apart (大阪 Music Club JANUS)

昔の曲がメインのセトリがやばかった。


the band apart / TENNIS CLUB e.p.視聴用

12月3日 MONOEYES (Zepp Numba)

アンコールツアーでようやくチケットゲット。

今年もなんやかんやでHIATUSと両方観れてよかった...。

www.youtube.com

レディクレ落選...

4年くらい毎年行ってたRADIO CRAZYは今年とうとう落選。。。。行きたかった。。。。。

はてなにおけるリモートワークあれこれ

こんにちは。このエントリは、はてなデベロッパアドベントカレンダー2015の11日目です。

developer.hatenastaff.com

昨日は id:tarao によるこちらのエントリでした。

developer.hatenastaff.com

はてなでは、東京と京都にそれぞれオフィスがあります。また、宮城と愛知のそれぞれの自宅からリモート勤務をしているスタッフもいます。 今まで何度かはてなにおけるリモートワークについて書かれたブログエントリがありましたが、今日はその最新版をお届けしようと思います。

全社的なリモートの仕組みについて

まずは、全社的な仕組みについて。

はてなでは、ポリコムテレビ会議システムが導入されています。

ポリコムは東京と京都のそれぞれの会議室やセミナールームなどに設置されていて、拠点間の会議はこれを使って行われます。 また、はてなでは始業時に全員参加の朝会があり、全体周知や前日のリリース情報の共有、当番制の3分スピーチなどをして1日の仕事を始めます。

朝会は東京と京都のセミナールーム同士をポリコムで繋ぎますが、ここで問題となるのは自宅でリモート勤務をしているスタッフについてです。

はてなでは、朝会だけでなく毎週木曜日の技術勉強会など、拠点間のセミナールームを繋いで開催される多人数のミーティングがいくつかあります。

そこで、最近になって自宅からのリモートスタッフもこうした全社的なテレビ会議に参加できるよう、新しいサービスが導入されました。

BlueJeansというテレビ会議サービスです。 bluejeans.com

BlueJeansの大きな特徴は、ポリコムのシステムとPCとが接続できるというところにあります。

これにより、東京と京都のセミナールームからはポリコム、自宅環境からはPCをBlueJeansで接続することで、全員が1つのテレビ会議に参加することができます。

また、朝会のような全体イベントだけでなく、通常の会議でも会議室のポリコムと、リモート勤務スタッフのPCをBlueJeansで接続して利用できます。

BlueJeansの導入により、自宅でのリモート勤務がぐっと楽になった印象があります。

開発チームのリモートワークについて

次に、開発チームにおけるリモートワークについてご紹介します。

ぼくが所属するMackerelチームを例にしましょう。

Mackerel開発チームは、東京オフィス、京都オフィス、愛知からの自宅勤務スタッフの3拠点にまたがってチームメンバーが分散しています。

日常的なコミュニケーションは、主にSlackGithubのIssueなどを用いて行われます。 Mackerelチームのコミュニケーションについては、ディレクターの id:Songmu によるこちらのエントリが詳しいです。

developer.hatenastaff.com

基本的にはチャットでのコミュニケーションがメインとなりますが、チーム朝会だけは全員顔を合わせて行われます。

チーム朝会はZoomというサービスを使って行われます。

zoom.us

朝会でZoomを使う理由は、自分の端末上でZoomを実行し、かならずチームメンバー全員がそれぞれ自分の端末でテレビ会議システムにログインするようにするためです。こうすることで、自宅からの参加者とオフィス勤務のメンバーとで、環境を揃えることができ、オフィス出勤者同士でワイワイしてるのを自宅から眺める、といった変な距離感が発生しないようにしています。

リモートワークをするにあたって、環境を揃える、というのはとても大切なことだと思います。特にオフィス勤務者は、なかなか自宅からのリモート勤務がどういったものかピンとこないものです。以前は「チームメンバー全員が自宅でリモートする日」などを設けて、自宅からのリモート勤務の雰囲気を全員で共有する、といった取り組みなどもやっていました。

こういったことを注意しておかないと、オフィス勤務者同士の口頭での決定事項が共有されず、他のリモートメンバーが置き去りになってしまう、といった問題が起きてしまいます。

一方で、スプリントの振り返りや、計画会議など多少込み入った議論が必要な場合は、自宅勤務スタッフもその日だけオフィスに出勤してもらい、なるべく同じ場所で議論するようにしています。やはりリモート越しに仕様についての深い議論をなどをするのは難しい、という印象があります。

Mackerel開発チームとは別のチームの話になりますが、リモートワークでは兼務が難しい、ということもあるようです。複数のチームの仕事を兼務していると、いわゆる割り込み作業が多く発生します。リモートワークの場合、こういった割り込み作業のコントロールが少し難しいようです。例えばオフィスで仕事をしていれば、割り込み作業に対して、それぞれの依頼者に声をかけて気軽に調整することが可能ですが、リモートワークだとそういった「それぞれの依頼者に声をかける」という作業が少し大げさになってしまいます(テレビ会議をセッティングしたり、グループチャットを立ちあげたり)。なのでリモートワークで兼務をする場合は、曜日によってどの仕事をするか明確化する、などの工夫をしているようです。

リモートワークでのコミュニケーションについて

ネットワーク環境が整備され、リモートワークは以前と比べて格段に楽になりました。 ソフトウェア開発において、GithubにIssueをたて、コードを書いてpushしてCIの結果を待ってプルリクエストを送る、といった日常の作業では、ネットさえ繋がっていれば場所の制約はまったくありません。こういったことから、開発の仕事はロケーションなど気にせずにどこでもできそうな気がします。

たしかに、コードを書くことは場所を問わずにどこでもできます。しかし、チーム開発となると少し事情は変わります。 いくらチャットや最新のテレビ会議システムを使おうとも、メンバー全員が同じオフィスで仕事をすることと、リモート越しに仕事をすることはまったくの別物です。

コミュニケーションでメンバー同士が意思疎通するためには、様々な情報が必要です。会話の際の声のトーンや表情、日常の所作。そういったところから、我々は非常に多くの情報を読み取りながら他者とコミュニケーションをとります。リモートワークにおけるコミュニケーションでは、こういった「言葉以外の情報」の多くが欠けてしまうことに注意する必要があります。

Slackで日常的にチャットをする場合、我々は絵文字を多用します。これは、言葉だけでは伝わらない自分の感情をチャット上で補完するためのテクニックです。たとえば、レビューなどで少し込み入った議論をする場合、どうしてもきつい文体になってしまうので、その場合「自分は別に機嫌が悪いわけではない」ということをチャット越しに伝える(感嘆符をつけたり、「〇〇ですー」と語尾を伸ばしてみたり)といった具合です。

チームで仕事をするには、それぞれの人となりを知ることも大切な要素なので、リモートワークがベースのチームであっても、定期的に顔をあわせる機会を作ってメンバー間の相互理解を深める必要性があるのではないかと思っています。

おわりに

リモートワークは、いろいろと難しい部分もありつつも働き方の多様性を拡げる大切な取り組みです。 とりわけリモートワークだけが難しいわけではなく、チームで仕事をするには様々な問題と対処する必要があります。リモートワークの工夫とはそういったチームで仕事をするための工夫の延長にすぎません。

はてなでは、多様な働き方を日々改善しながら開発に取り組めるメンバーを募集しています。

hatenacorp.jp

アドベントカレンダーの明日は id:dekokun です。お楽しみに!!

アリスとボブはパスワードつきzipをメールに添付したりしない - 暗号技術入門を読んだ -

パスワードつきzipの添付メールと鍵配送問題

ボブのもとに届けられたアリスからのメール。このメールにはzipファイルが添付されていて解凍にパスワードが必要だ。このパスワードは、添付ファイルの後、アリスから別のメールに記載されて送られてくる。この手順により、最初のメールをイブが盗聴したとしても、イブはパスワードを知らないので添付ファイルを解凍することはできない。

一見すると安全に情報をやりとりしているようにみえるこの形式は、実はまったく安全ではない。ファイルが添付されている最初のメールが盗聴できるのであれば、当然イブは次に送られるパスワードが記載されたメールも盗聴できるからだ。

zipに施されるパスワードの強度はとりあえず気にしないこととして、この情報のやりとりは暗号におけるとても重要な問題をないがしろにしている。それは鍵配送問題と呼ばれる。

暗号の中には、かなり早い段階で「絶対に解読不可能であることが数学的に証明されている暗号」が存在する。使い捨てパッド(ワンタイムパッド)と呼ばれる暗号である。ただし、この暗号を使って情報をやり取りするためには、送信者と受信者が同一の鍵を共有しなければならない。使い捨てパッドで暗号化した文章をボブに送ろうと思っているアリスは、暗号化された文章とともに、暗号化に用いた鍵を安全に(決してイブに盗まれることなく)ボブに届けなければならない。いかにして、安全に鍵を通信相手に届けるか。鍵配送問題は暗号技術における肝だ。パスワードつきzipのメールのやりとりは、この鍵配送問題がずさんすぎるために、秘密の通信としてはまったく意味をなしていない。パスワードが安全に相手に伝わるなら、そもそも暗号化などせずとも文章そのものが相手に安全に伝わるはずだ。

事前にミーティングの場などで、口頭によってパスワードを共有しておく、などの方法であれば若干安全にはなるが、今度はそのパスワードをいかに保存するか、という鍵管理の方法における問題もある。

暗号の歴史は鍵配送問題の歴史

数年前にサイモン・シンの『暗号解読』という本を読んだ。 とても良質なドキュメンタリーで、暗号作成者と暗号解読者の戦いの物語が、克明に描かれている。まるでスパイ小説を読んでいるような錯覚に陥るほど、その筆致は刺激的だ。また、この本は物語としておもしろいだけでなく、きちんとそれぞれの暗号の仕組みをわかりやすく解説してくれる。

暗号の歴史は、鍵配送問題をいかに解決するか、という歴史でもある。サイモン・シンの『暗号解読』で描かれる物語において、人類が獲得した「公開鍵暗号方式」のくだりは、ミステリー小説の解答編を読んでいるような痛快さがある。

この本で人類の壮絶な戦いの物語を読んだあとに、メールにパスワードを記載して送信しようという気持ちには絶対なれない。

暗号技術と、その周辺の人間たちのドラマは、それほどに鮮烈でおもしろい。

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

暗号技術入門 - 第3版 -

数学ガール結城浩による『暗号技術入門 - 第3版 -』

以前から名著として知っていたが、版が新しくなったのをきっかけに読んでみた。 とても読みやすく、暗号技術の奥深さ、面白さがわかるよい本だった。

我々は、日常的に暗号技術を使って生活している。 Amazonでクレジットカードを使って買い物をしているときに、ブラウザに表示されているURLを見てみると、"https://"ではじまるURLが表示されている。 これは、SSL/TLSという暗号通信のプロトコルを使っている印だ。

なにげなくダウンロードして使っているスマートフォンアプリにも、デジタル証明書という暗号技術の一種が使われている。

ITエンジニアであれば、githubを利用する際に鍵ペアを作って、公開鍵を登録したりもしているだろう。

これらの技術は、詳細なアルゴリズムを知らなくても、ちょっとした手順やコマンドを知っていれば誰にでも使うことができる。

暗号技術は、「秘密の通信」を行うための技術である。秘密のやりとりをするための技術であるのだから、暗号化のアルゴリズムも秘密にした方が安全ではないか、と直感的には思ってしまう。ところがそれは間違いで、アルゴリズムが公開され、その強度が世界中の暗号学者によって検証されているオープンな方式の方がはるかに安全なのだ。秘密の通信を行うための技術が、実はオープンであるほうが安全、という一見すると直感に反するこの関係性が、暗号の難しさであり、面白さでもある。

これはとても重要なことで、『暗号技術入門』でも、オープンであることゆえの安全性が、繰り返し語られる。

暗号のアルゴリズムは難しい?

我々は日常的に"https" などで暗号通信を行っているけれど、それが本当に安全かどうかはどうやって判断しているのだろう。マイクロソフトGoogleといった有名企業が実装しているブラウザだから、という理由で安心しているのだろうか。それも決して間違った判断ではないかもしれないが、どうせならアルゴリズムをきちんと知ったうえで、「自分が使っている暗号化方式は、こういう理屈だから安全」と納得したほうがよいのではないだろうか。

暗号技術は数学によって構築されているので、難しそうな印象がある。もちろん、暗号技術に用いられている数学的な要素をすべて理解するのはとても難しい。けれど、なぜその技術が安全なのか、という理屈を理解するのは、実はそれほど難しくない。というより、結城浩という人が、わかりやすく理屈を理解できるように丁寧に整理してくれている。『暗号技術入門』はそういう本だ。

結局は人間の問題

『暗号技術入門』は、「暗号学者の道具箱」として以下の6つの暗号ための道具を詳しく解説してくれる。

また、新しい版では、ビットコインの仕組みや、最近問題になったOpenSSLやSSL/TLSにおける脆弱性の解説など新しいトピックについても書かれている。

ぼくがこの本でとても良いな、と思ったのは、最後に「人間の不完全さ」に触れられていることだ。どんなに強力な暗号を施しても、それらを使うのは結局は人間である。情報を扱うのが人間である以上、「システム管理者になりすまして電話でパスワードを聞く」などの手段によって、いくらでも暗号を解読する手段は存在する。冒頭のパスワードつきzipの添付ファイルなどはまさにその典型で、zipファイルに充分な長さのパスワードを設定したところで、そのパスワードの運用によって安全性はいともあっさり崩壊してしまう。

この人間の不完全さこそが、暗号通信の難しさでもあり、暗号の歴史における物語の面白さでもある。

暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス

暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス

福岡の"Hacker Tackle"でScalaについて話してきた

hackertackle.github.io

福岡でHacker Tackleというイベントがあって、声をかけていただいたので行ってきた。

福岡というと、Nulabやペパボがあったり、レベルファイブとかサイバーコネクトツー とか LINE 福岡とか、楽天の福岡支社があったり、ITの盛んな地域という印象がある。今回のイベントは、複数の技術領域をまたがって、福岡の横断的なITコミュニティを形成しましょう、という雰囲気だった。

福岡ではまだScalaがそれほど盛んではなく、周辺事情なんかも含めた概要について話してほしい、ということだったので、次のようなスライドを作って発表した。

www.slideshare.net

(スライドあまり情報量ないので、いつでもお話しますから声かけてください!)

発表は概ね好評で、懇親会でも「Scalaを学んでみようと思いました」という声が多く聞けたので、とてもよかった。

ちょうど先週、ブラタモリで博多特集をやっていて、勉強会翌日の朝に中洲のあたりを散歩していたら、ブラタモリで登場した段差に偶然遭遇してめっちゃテンションがあがった。

f:id:daiksy:20150927100138j:plain

観光案内のおじさんが、しきりに観光客相手に「ここね。このあいだタモリが来たんですよ!知ってますか? ブラタモリ」と熱く語っていたが、当の観光客にはあまり伝わっていないようだった。観光案内のおじさん、ぼくは観てたよ!知ってるよ!! (心の声)

あと、まるごと全部一蘭、というビルがあって驚愕した。

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どうやら本社ビルらしい。

天然とんこつラーメン 一蘭 企業案内

福岡、とにかく最高だったのでまた行きたい。

ライジングサン・ロックフェスティバルの行き方と過ごし方

f:id:daiksy:20150816045742j:plain

去年に引き続き、今年もライジングサンロックフェスティバル(以下RSR)に行ってきた。

rsr.wess.co.jp

日中に開催されて、終電までには公演が終了する都市型のフェスと違って、郊外で夜通し開催されるタイプのフェスは、参加のハードルが少し高い。ぼくも去年に初めて行った時は、いろいろ不安も多くて経験者にヒアリングしまくって準備した。

2年連続で行くと、さすがにいろいろ知見も蓄積されて、今年はかなり快適に過ごせたので、後の世の人々のためにまとめを兼ねて、知見などを共有しておこうと思う。

ちなみに大阪在住という遠方の人間の参加についての知見で、現地の人はもう少しいろいろ楽だろうと思う。

■ 準備編1 チケットの手配

まずはチケットが無いとはじまらない。 RSRでは、以下の券種が存在する。

入場券

その名の通り、会場に入場するためのチケット。今年は8月14日、15日の開催で、2日間通し入場券と1日目・2日目のそれぞれの入場券の3種類ある。1日目の入場券はその日の23時30分まで。2日目の入場券は翌日の正午まで滞在可能。 1日目は23時からキャンパーズ専用の深夜ライブがあったりするので、ひと通りの公演を楽しみたければ通し入場券を買うしか無い。

HEAVEN’S テントサイト付入場券

メインステージとなる、SUN STAGEに近いエリアのHEAVEN’S テントサイトの利用権つきチケット。 1枚でテントサイト内の1区画を専有できる。家族や友人連れの人などは、このチケットを複数枚取る人もいる。 テントサイト内で、実際にどの区画を専有するかは、先着順で当日に指定できるので、例えば複数チケットを購入して隣り合う3区画を専有してテントを設置しつつ隣にバーベキュー用の広いエリアを確保する、といったこともできる。テントサイトチケットは、1枚につき1名分の通し入場券がついているので、たとえばテントサイト1区画を借りて、3人でそのテントを共有する、という場合は、テントサイトチケット1枚、前述の通し入場券2枚、という買い方をする。

FORESTテントサイト付入場券

メインステージから遠いエリアのテントサイト。HEAVEN'Sサイトより1区画が少し広い。 BOHEMIAN GARDENというステージが側にあって、メインステージからは最も遠いが、渋目のコアなラインナップの公演が多い。

オートキャンプ付入場券

区画内に自動車を乗り入れられる。車両のみ、とかテントのみの人は利用不可。

チケットの買い方

チケットは、先行販売が数回と、一般販売がある。一番最初の先行販売は3月のHEAVEN’S テントサイトの販売。まだ出演アーティストは完全に未発表でリスキーだが、このタイミングなら確実に手に入る。 チケットは第3希望まで指定可能で、第1, 第2希望にテントサイト内の好みの区画を指定して、第3希望で「どこでもいい」みたいな指定をするとよい。ちなみにぼくは2年連続で第3希望だった。今年はシマフクロウエリア。SUN STAGEに近くて、けっこうよい位置だった。

通し入場券や各日入場券が売り切れることはまずない。今年も普通に当日券が販売されていた。なので、事前にテントサイトを抑えておいて、ゆっくり一緒に行く友人を探す、という戦法が取れる(今年は友人確保に失敗してぼっち参加になったけど)。

■ 準備編2 会場までの交通手段の確保

チケットを無事にゲットしたら、次はどうやって北海道まで行くかを考えないといけない。 毎年8月の第2金曜日から日曜日の早朝という日程で、完全に世の中の盆休みとかぶっている。

3月の先行販売でチケットを取っていれば、まだいくぶん余裕があるが、その後の先行販売で確定した場合など、たぶん自力でこの時期の航空券やホテルの手配はたいへんだろうと思う。一昨年までの3年間ほど、茨城のロッキンジャパンに自力参加していたが、チケットが確保できる5月の段階で近隣のホテルを予約する難易度は死ぬほど高くて、土浦とか水戸とか異様に遠い場所でホテルをとる感じになっていた。

ぼくはJTBのツアーを利用した。

http://www.jtb.co.jp/ripple/rsr2015/

詳細はリンク先を参照してほしいが、ご覧のように複数のプランがある。6月中旬の申し込み直後のタイミングだと、早割で少しお値段が安くなる。ぼくは前日の札幌観光つきのプランを購入した

当日の日程

JTBから8月の頭くらいに書類が送られてくる。 書類は、往復の航空券の引換券と札幌市内のホテル宿泊券。ホテルや航空券の発着時間は自分で指定はできない。

航空券は、離陸時間の90分~60分前の間に、空港のツアーデスクで受け取る。 ぼくの場合は8:00発の航空券だったので、6:30から7:00に自宅から関西空港に到着できるように行くのは始発しか無くてリスクが高いと判断し、前日の夜から関西空港併設のホテルに宿泊した。

前日は夜に空港に着ければよいので、普通に出勤して定時後に会社の側にあった関西空港行きのリムジンバス乗り場から出発することに。

ちなみにぼくの日程は以下のとおり(飛行機の発着時間はツアーの申し込み時期によって異なりそう)

  • 12日。普通に出勤して定時(19時)まで仕事
  • 19:13 烏丸御池発の空港行きリムジンバスに乗車
  • 21:00 空港併設のホテルにチェックイン
  • 13日。6:30にツアーデスクで航空券受け取り
  • 8:00 関西空港発 (ANA)
  • 10:00 新千歳空港
  • 電車で札幌へ移動(自費)
  • 11:00 札幌着
  • ホテルに荷物を預け、観光 (ホテルのチェックインは14:00以降)。寿司とかラーメンとか食べよう。
  • 14日。08:30 ホテル前に来ているツアーバス乗車。旅程的には9:00発だけど、みんな早めに乗るのでバスが定員になると早めに出発する。すると入場列に早めに並べるのでお得。
  • 9:40 会場着。
  • 10:00開場。ライブがはじまるのは15時からなので、この間にテントを設営したりセットアップしよう。テントについては詳細は後述。
  • 16日。5:00 終演。ツアーバスに乗車。飛行機まで余裕があるので、しばらく現地でのんびりしてもいいけど、早めに空港に行くとお風呂に入れる。詳細は後述。
  • 10:45 新千歳発 (JAL) 。行きと同様に90分~60分前の間でツアーデスクで航空券を受け取る。
  • 12:50 関西空港

■ 準備編3 テントの手配や当日の持ち物

テントの確保

これで、現地までの往復の足は確保できた。次は、フェス期間中の宿泊を考えよう。 フェスは、2.5日間(今年だと14日から16日早朝まで)開催され、通し入場券を持っていればその間ずっと会場にいることになる。

前述のJTBのツアーには、ホテルプランがあって、14日の夜は一旦バスに乗って札幌市内のホテルに行く、という選択肢もある。とはいえ、それにしても15日の夜から16日の早朝まで滞在する必要があるし、14日の深夜もキャンパー向けの公演などあるので、テントサイトと、そこに設営するテントを確保しておきたい。

テントは、現地でレンタルできる。

SERVICE サービス - RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO

これを事前に申し込んでおくと、現地でテントを借りて、自分で設営するが、なんと帰りはその場に放置して帰って良い。ちゃんと畳んで返却すると、3,000円キャッシュバックがある。フェスでくたくたに疲れている身に、テントを畳まなくて良い、という最高のサービスである。

ちなみに、ぼくはうっかりしてて、レンタル開始当日の夕方にサイトに行ったら、もう4人用テントしか残っていなかった。

当日の持ち物

テントレンタルに成功すれば、当日の荷物は着替えだけで過ごせる。とはいえ、より快適にすごるためにおすすめ持ち物を共有しておこう。

防寒具

現地は夏とはいえ、夜は冷える。今年は比較的ましだったが、去年の夜は息が白くなるほど冷えた。 夜を快適に過ごすために、油断せず厚手のパーカーやトレーナーくらいはあったほうがいい。

雨具

屋外のイベントなので、雨の可能性は常にある。会場内は傘の使用は禁止なので、レインウェアや長靴などを用意しておくとよい。ただ、長靴はかさばるので、ぼくは汚れてもよい靴を一足持っていった。あと、ジップロックを持って行くと、雨天時にスマフォをそこに入れたまま操作できて便利。

(アウトドアプロダクツ)OUTDOOR PRODUCTS ロゴプリント柄 ポンチョ はっ水加工 ODPLG  ブラック M

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照明

会場内はいたるところに照明器具が設置されていて、基本は無くてもよいが、それでも足元が不安な場所がいくつかあるので、簡単な照明器具を持って行くとよい。スマフォのライトでもいいが、それはそれでバッテリーが不安。

モバイルバッテリー

会場内には充電エリアがあって、そこでスマフォの充電が可能だが、混んでいる場合があったり、充電の間その場に拘束されるので、モバイルバッテリーがあったほうがいい。

ぼくは10400mAhのものを2台持っていったが、結局1台しか使わなかった。

その他

あとは洗面具とか、日焼け止めとか持っていけばいいが、実は会場内にコンビニがブースを出していて、身の回りの小物は多少忘れ物をしてもだいたい現地で買えるので安心しよう。ぼくも去年歯ブラシを忘れて、現地のコンビニブースで購入した。

(2017年追記)

雨のライジングの知見などを得たので、追記記事書きました

daiksy.hatenablog.jp

■ 当日編 お風呂問題

屋外で2.5日間すごして、その間風呂に入らずに飛行機に乗るといろいろ心配である。そこで、お風呂を気にしておきたい。

RSRでは現地でいくつかのサービスがある。 まず現地に温水シャワーが設置されていて、初日の朝に予約をすることで、任意の時間に利用できる。結構混むので、自分の好きな時間には予約できないかもしれない。

あと、途中で会場からバスに乗って、近隣の温泉施設に行けるサービスもある。

http://rsr.wess.co.jp/2015/support/service/#p01

幅広い時間帯で利用でき、プランによっては途中で寿司が食べられるものもある。 事前にチケットを購入しておくとよい。

最後に、新千歳空港で風呂に入ることもできる。空港内に温泉施設があって、そこを利用できる。

新千歳空港温泉 | 旅の始まり、終わりに、最高のリラックスとリフレッシュを。 空にいちばん近い温泉郷、新千歳空港温泉。

朝は7時半に受付が終了して、そこから10時まで開かないので、終演後すぐにツアーバスに乗る必要があるのと、めっちゃ混むので場合によっては入場制限的なものがあるかもしれない。あと、どうも洗い場のシャワーがベストエフォート形式らしく、16日の朝はRSR帰りの客で激混みするので、シャワーの噴射時間が異様に短い。

■当日編 観たアーティストまとめ

最後に、今回ぼくが観たアーティストをまとめつつ、終わろうと思う。

初日

KANA-BOON

オープニングアクト。北海道の地で地元のバンドを観るの、感慨がある。

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期待外れにも程GIRL(from tricot)

まったくノーマークだったが、グッズ売り場を散策してたら、"(from tricot)“の文字に気づいた。tricotの変名バンドらしい。モー娘を歌い出したり、MCとかいい感じにグダグダでよかった。toricotの「おやすみ」のアコースティックアレンジが特に最高。今年はKJと被ってたので行かなかったけど、tricot名義のステージもまた観たい(京都大作戦で観た)。

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MONOEYES

ツアーのチケット全滅だったので、ここで観れて本当によかった。。。

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MAN WITH A MISSION

休憩しながらテントで聴いてた。

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細美武士 (東北ライブハウス大作戦)

MONOEYESの細美さんの弾き語り。22時頃でほどよく酔いながら屋外という最高のシチュエーションで聴いた。とくにエルレの金星は不覚にも泣きそうになった。

FRYDAY NIGHT SESSION

キャンパーズ限定の公演。SCOOBIE DOがホストバンドになって、いろんなバンドのボーカルが1曲ずつ歌う形式。最後にシークレットゲストでつのだ☆ひろが出てきて、メリージェーンを披露。良い歌は時代や文脈を越えて良いものだ、としみじみした。

2日目

レキシ&二階堂和美

いつもどおりのレキシ。もはや音楽というよりショーである。 北海道民、どこからかリアル稲穂持参でやってきて、すげー、って思った。

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聖飢魔II

デーモン閣下を生で観れることがあるとは思ってなかった。MCがとにかくゲスい下ネタで、悪魔っぷりが最高だった。

安全地帯

このバンドを観る動機はただひとつ。「なにかやらかすやってくれるのでは」という一択である。 ロッキンのステージもやりたい放題だった。

そして結果は期待通り。

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ステージ演出もこのようにぶっ飛んでいたが、玉置浩二の歌唱力がそういうもろもろを完全に吹き飛ばす素晴らしさである。ある意味、この会場で最もロックンロールの精神に近い男なのではなかろうか。

いや、ほんとに聴いてて思わず涙ぐんでしまうくらいの迫力だったんですよ。

THE SKA FLAMES

休憩しようとお酒飲んでたら、側のステージから聴こえてきて、あまりに良すぎたので思わずステージまで駆け寄ってしまった。

東京スカパラダイスオーケストラ

スカ充。かなり疲れていたけど、それでも体を揺らしてしまう。

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FULLARMOR

テナーのひなっちとホリエさんらによるインストバンド。眠さMAXの時間帯だったけど、めっちゃ良かった。

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降谷建志

Dragon Ashはぼくが音楽が好きになるきっかけになったバンドで、KJは同い年。ということでぼくにとっては特別な公演だった。 最近のDragon AshのライブではKJはあまりMCをやらないけど、いつになく冗舌だった。

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10-FEET

北海道で聞く京都弁のMCに癒やされる。大トリにふさわしいパワフルなステージだった。お約束のKJの乱入とか、とにかく最高。

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