野中郁次郎先生が先日亡くなられた。
スクラムの基盤となった竹内弘高先生との共著論文 "The New New Product Development Game"が有名で、代表的な著書『失敗の本質』からは自分も大きな影響を受けている。
直接お目にかかる機会はなかったが、Regional Scrum Gathering Tokyo 2021ではオンラインで講演を聴かせていただいた。
我々が生業としているIT業界は、他の産業と比べて新しい業界である。そのため、業界を大きく歴史的なレベルで牽引してきたキーパーソンの多くがまだご存命である。
たとえば、Linuxカーネルの開発者であるLinus Torvalds。Rubyの開発者まつもとゆきひろ。WWWの考案者Tim Berners-Lee。
こういった後の教科書に名を残すであろう人たちに、その気になればまだ会いに行くことができる。野中先生も自分にとってはそのようなレジェンドのお1人であったが、お会いすることなく鬼籍に入られてしまった。
自分は以前、Scalaというプログラム言語を熱心に学んでいた時期がある。ScalaMatsuri 2014というScalaに関するカンファレンスに、その言語設計者であるMartin Odersky先生が来日して参加されたことがあった。
せっかくの機会なので少しでもお話したいと思っていたが、懇親会の席で、英語が極めて不得手なのでさてどうしたものかと右往左往してしまった。そうしていると、そばにいた id:garbagetownさんが「一緒についていってあげるから、声かけてきなよ」と背中を押してくれて、無事に声をかけて、先生の著書にサインをいただくことができた。
id:garbagetownさんには足を向けて寝られないほどに感謝している。
このように、自分の生業に使うさまざまな道具や概念を発案した多くの人と、まだ会おうと思えば会える、というとても幸運な時代をわたしたちは生きている。アインシュタインと同時代を生きた物理学者たちと同じ環境なのかもしれない。
この幸運を活かして、多くの人から直接知恵を授かる機会を大切にしたい、というのを考えさせられた。