世間では最近「美味しい日本酒 == 獺祭」という雰囲気になっている。
プレミア価格がつき、百貨店の酒売り場などに行くと常に「次の獺祭の入荷予定日」などと張り紙がしてある。
お酒が広くいろいろな人に飲まれるようになる、というのは市場が活性化され、それによって良質なお店やサービスも増えるので酒飲みにとっては好ましい状況である。が、いかんせん日本におけるこういったブームは一極集中になりすぎるきらいがある。
今は猫も杓子も「獺祭」といった様子。
SNSを見ていると、普段酒を飲んでいる様子など流さないような人まで「うん!フルーティ!」などとつぶやいている。
ぼくは天邪鬼なところがあって、ここまでブームになると逆に「そのうちブームが落ち着いてからゆっくり飲もう」という気分になってくる。流行りものに乗っかりたいミーハーな気質がある一方で、誰もが良い、と言っているものをあえて避けて他の良いものを楽しんでなんとなく通ぶりたい、という気持ちもある。
先日百貨店の酒売り場で、なんとはなしに日本酒コーナーを眺めていた。こういった百貨店で獺祭が手に入るなどと思っていないので、なにか好みのお酒は並んでいないかな、といった風情で棚を眺めていたのである。すると、売り場スタッフが声をかけてくる。
「獺祭をお探しですか?」
探してなどいない!断じて!!ぼくがそんなにミーハーに見えるのか!!! と謎の天邪鬼ぶりを発揮した心境になってしまった。もちろん心の声にとどめたまでで、そのスタッフとは「やっぱり入手しづらいんですか?」などと当たり障りない会話を続けた。
とはいえ、やはり一度くらいは飲んでみたい。飲んだうえで、「獺祭も美味しいけど、他にも美味しいお酒いっぱいあるからプレミア価格で飲むほどじゃないな」と上から目線で通ぶりたい。
というわけで、去年の秋頃から、なんとなく飲めるチャンスを探っていた。
が、去年のぼくは運勢絶不調の星回りで、トイレに閉じ込められるは、熱燗を頼んだら中身がお湯だったりといった按配である。
「獺祭飲めます」という張り紙の店に赴くも、ことごとく品切れの憂き目にあい、これまでまったく飲めずにいた。
そういった日々を過ごしていたら、昨日になってようやくチャンスが巡ってきた。それが上の写真の「獺祭」である。
一口飲む。「うん!フルーティ!」
なるほど、確かに普段甘いカクテルしか飲まない女子がSNSに投稿したくなる気持ちもわかる。
とはいえ、やはり他にも美味しいお酒がいっぱいあって、それらは別にプレミア価格で無くても飲めるからブームが落ち着いたらゆっくり飲もうかな、と思った。
ふと店内を見ると、かつて一世を風靡した「越乃寒梅」がその日の獺祭の三分の1の価格で提供されていた。
- 作者: 桜井博志
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